絶体絶命のとき、思うこと

デールカーネギーさん、著書『道は開ける』で有名な方ですね。

私も、『道は開ける』は20年くらい前に初めて読んで、実は今もときどき、読み返しています。

そのなかで、『カブトムシに打ち倒されるな!』というちょっと変わったタイトルの章があって、とても衝撃を受けました。

かいつまんでご紹介しますと、第二次世界大戦のさなか、日本の機雷施設艦がアメリカの潜水艦ベーヤ号に対して機雷攻撃を行いました。

ベーヤ号は壮絶な攻撃を受けて、水深84メートルの海底に激突しました。

乗組員のひとり、ロバート・ムーア氏は、乗組員87名とともに、艦の中でひたすら攻撃がやむのを待つしかありませんでした。

乗組員に出された命令はただひとつ。自分の命を守ること。

そして、そのためにできることは、「ベッドで横になること」しかありませんでした。

艦内の換気扇、冷房はすべて止まっていて、気温は38度を超えていました。

しかし、ムーア氏はすさまじい恐怖に背筋が寒くなり、セーターと毛皮のジャケットを着た。それでも震えが止まらなかったと言っています。

攻撃は15時間にも及びました。その恐怖と言ったら!

彼は、絶体絶命とはまさにこれだと繰り返し口にしながら、これまでの日々を思い返していました。

入隊前は銀行員だったが、安い給料で昇進の見込みもなく、自分の家も持てず、新車も買えず、妻に美しい服を買ってあげることもできないことをくよくよと悩んでいた。

いつもがみがみと小言をいう上司を憎み、些細なことで夫婦喧嘩をした。交通事故でできた額の傷跡のことも気に病んでいた。

しかし、機雷に吹っ飛ばされはしないかと震える中で、そんな悩みがどれも馬鹿げたものに思えて、彼はこう誓いを立てました。

「もしふたたび太陽や星を拝むことができたら、もう決して、悩んだりはすまい」と。

もしも、もう一度チャンスがもらえるなら。

もしも、この苦境を乗り切ることができるなら。

もしも、妻や子供の顔を、もう一度見ることができるなら。

人はなかなか、そうした極限の状態に身を置くことはないかもしれませんが、日ごろの不満や悩みで頭がいっぱいだと、本当に大切なことが見えなくなってしまうことがあります。

家とか車とか、服とか食べ物とか、仕事がどうとか、お金があるとかないとか、それらはみんなオプションです。

あとから乗っけるトッピングみたいなものです。

いろいろ悩みもありますけど、大切なもの、見失わずにいきましょうね。