すごく怖いことや嫌なこと、辛いことや苦しいことがあったとき、人はよく『○○がトラウマになった』ということを言います。
トラウマと言う言葉は、ギリシャ語の『傷』という意味で、心理学者フロイトが『精神的外傷』という意味で使用したのが最初だと言われています。
トラウマには大きく分けて2種類あります。
ひとつは地震などの天変地異、戦争、テロなどによって集団的に関係するものと、もうひとつは個人的に関係するトラウマです。
個人的に関係するトラウマとしては、事故や犯罪のように突発的に襲ってくるものと、長期的に継続してしまうものがあります。
長期的に継続してしまうものとしては、例えば学校や職場でのいじめ、嫌がらせ、DVや虐待などがあげられます。
そして夫婦関係においては、浮気もそのひとつです。
夫の浮気がある日突然発覚したり、夫から予期せぬ形でその事実を告げられたとき、妻が受ける精神的ショックは計り知れないものがあり、怒りや悲しみに駆られて大きなストレスを抱えることになります。
特に、それまで夫との関係が良好で、夫のことを全面的に信頼していたような場合、裏切られた思いとともにこれまでの生活を全否定されたように感じて、心に深い傷を負ってしまうのです。
またトラウマは、『記憶』の中にも深い傷を残すため、夫が相手女性と別れて、浮気そのものは終わったとしても、夫のことが信じられず不安になってしまったり、また浮気が再発するのではないかという怖れを抱いて、その苦しみから抜けられずにいる方が少なくありません。
先日ご相談いただいた方も、「夫は、携帯をいつでも見れるようにしてくれているし、仕事中のときでも、不安なときはいつでも電話してくれていいよ、と言ってくれるし、フラッシュバックで私が感情的に責めてしまったときにも、根気強く話を聞いてくれます。でも、私はどうしても夫のことが信じられず、夫の優しい様子さえも、相手女性と隠れてうまくやるために、カモフラージュでやっていることのように思えてしまうんです」とおっしゃっていました。
これは決して、この方が疑い深いとか、夫の誠意を否定しているということではないのです。
むしろ、こういう方ほど、内心は夫を信じたい思いが強いですし、それができないギャップに苦しんでいたりします。
でも、だからこそ、『もしもまだ続いていたらどうしよう』『もしまた裏切られてしまったら・・・・』という不安が大きな怖れとなり、夫の言葉や態度をそのままに受け止めることができなかったり、夫の浮気によって、これまでの幸せがすべて偽りだったように感じて、妻としての自信をなくしてしまっている状態なんです。
自信をなくしてしまうということは、考え方の傾向としても、「もう夫は私のことなど愛していないんじゃないだろうか」とか、「子供のために仕方なく私と夫婦でいるだけなのかもしれない」などと、自分の中で湧いてくる否定的な思考が止められなくなってしまったり、無気力な状態で仕事も家事もする気がおきないなど、心のコンディションがさらに低下する事態に及んでしまうこともあります。
このように浮気によるトラウマは、単に過去の辛い記憶に苦しむだけではなく、自分の精神状態を維持できずに、何に対しても不安や否定的思考に陥ってしまう心配もあります。