F子さんは、数年にわたり夫の浮気に悩んでおられます。
相手の女性が誰かもわかっているし、何度も問いただしたけれど、そのたびに夫は、『彼女とは何でもない。単なる友達だ』といって、浮気は絶対に認めません。
そのくせ彼女と会うときには、仕事だの用事だの男友達と飲んでくるだの、みえすいた嘘をついて出かけ、何食わぬ顔で帰ってくる。
嘘と分かっているだけ余計に腹が立つし、内心はそんな日々にうんざりしているけれど、あえて夫には何も言いわないことにしています、とのことでした。
『決して許しているわけではないんです。でも、もうさんざん言ってきたから。何度言ったところで、返ってくる答えは同じ。反応も同じだから。
言った後は、かえって主人の態度が悪化するし、めんどくさくなるだけだし、疲れてしまうから。
言わないことで表面上は平穏になりました。気づいていないフリをすることで、ぶつかることもなくなりました。
主人は機嫌のいい日が増えて、少し会話も増えたかも。
でも、女性とはいまだに続いているし、主人は自分の嘘やごまかしが通用していると勘違いして、裏ではますますやりたい放題になってきた気がします。
結局、辛い状態が続いていくだけで、状況が少しも好転しない、という無間地獄が続いています』
これ、そうとう辛いです。
浮気していることを知りながら、夕食を作って夫の帰りを待ち、帰ってきたら『おかえり』と言って、何も知らないテイで会話をして、笑って見せる。
心はまるで、ヒビの入ったガラスの器のよう。いつ粉々になるかわからない。
それでも、必死に耐える。
F子さんのようにお電話くださる方の中には、辛さのあまり、電話口で泣きだしてしまう方もいます。
そのような方々に、耐え続けている理由をお尋ねすると、
『いつかは夫が目を覚ましてくれて、もとどおりの夫婦に戻れることをあきらめたくない』
『子どものために、両方の親が揃っている環境を失いたくない』
『離婚後の生活力を考えたら、夫と一緒にいるほうがメリットが大きい』
など、それぞれの理由があって、『夫の浮気にあえて触れない』日々を過ごされています。
その選択に、『正しい』も『間違っている』もありません。
何が正解かではなく、何を信じるかだと思うのです。
もしもいま、耐えることが必要なら、何を信じて、何のために耐えるのか。
その理由を見失わないことです。
残念ですが、妻の想いや努力とは裏腹に、浮気をやめられない男性もいます。
それでも、その男性と夫婦でいることに意味があるなら、辛い今を耐えることはできます。
同時に、『その選択が不変なものではない』ということも頭の隅に置いておいてください
その方がどこに向かっていきたいか、何を優先に考えるかによって、選ぶ道はちがってくるからです。
今までは夫に何も言わずに堪えてきたが、『これ以上は無理、黙っていられない』と心のスイッチが入れば、望む未来が今までとは違うわけですから、今度は新たな方向に行動されていくようになるでしょう。
ご相談のなかで、こうした人生の道筋をご一緒に考えさせていただき、数年越しのお付き合いになっている方もたくさんいらっしゃいます。