主婦H子さんから、こんなお話を伺いました。
「定年退職後に、夫が食事を作ってくれたり、洗い物を手伝ってくれたりして、家事に協力してくれるようになりました。
それ自体は嬉しいのですが、今まで仕事一筋で、家のことなど何もしてこなかった夫に手伝ってもらうことは、実は私自身にとって少しも楽になるものではありません。
夫には言えませんが、以前にカレーを作ってくれたことがありました。
そのときの台所のありさまと言ったら、、、、
なぜカレーを作るだけでこうなってしまうのか、というくらいの汚れようです。
洗い物をやってくれたこともありますが、油汚れは落ちていないし、指紋は残っているし、壁や床についた汚れもそのままです。
結局私がやりなおすことになります。
友達にこの話をすると、『やってくれるだけいいご主人じゃないの』と言われてしまうのですが、実際、有難迷惑というか、文句も言えずに困っています」
仕事ひとすじだった男性が、定年退職したあとにどういう日常を過ごしていくか。
これはもう、今まではまったく違った日々が始まるわけで、ある意味、未知の世界です。
それでも、自分が家にいるようになったぶん、少しでも家のことを何かやろうと、協力的に考えてくれる男性もいます。
奥さんが喜ぶ顔が見たいという思いで、見よう見まねで夕食を作ってみようと思ったり。
でも、そもそもの知識も技量もないので、本人にとっても困難の連続なわけです。
もしかしたら、ジャガイモや玉ねぎの皮の向き方も知らないかもしれません。
要領も悪く、手順もめちゃくちゃ、いつも台所に立っている奥さんからしたら、見てられないありさまだと思います。
正直いって、5歳くらいの子どもがお母さんのお手伝いをしようとして、お皿を割ったり、しょうゆの瓶を倒したり、小麦粉の袋を床にぶちまけたりするのと同じレベルです。
ではどうしたらいいのか?
これは男性の方々に知っていただいたことですが、いきなり手伝おうとか、何かやろうとする前に、奥さまがどうやって料理を作っているのか、どうやって掃除をしているのか、どんなことを、どういう手順でやっているのかをよく見てみるようにしてください。
よくありがちなのですが、男性は、「皿を洗う」ということを考えたとき、お皿だけをとにかく洗おうとします。でも、お皿の中にも、洗う順番があります。
油に汚れたものやそうでないもの、陶器でできているものや、プラスチックや木でできている食器によっても、洗い方は違います。
食事をつくるときも同じです。手順があり、ルールがあります。
たとえば肉を切った包丁で野菜を切ると、肉の匂いや油が野菜に移ってしまいます。だから野菜を切ってから肉を切る。同じ理由で、まな板で切る食材にも順番があります。
そういうことをわからずに手を出すと、奥さんにとって「気持ちは嬉しいけど、迷惑行為そのもの」ということになりかねません。
まずは見て、理解することから始めましょう。