夫が離婚を切り出してきた時

「夫から突然、離婚したいと言われました」というお電話をいただくことがあります。

詳しくお話を伺ってみると、しばらく前から夫の態度が冷たかったとか、一緒にいることを避けられていたとか、目を合わせてくれなかったなど、夫の様子にそれなりに思い当たるフシというか、『兆候』がある方も少なくありません。

そういう方の場合、決して『突然』ではなく、むしろ夫としては『満を持して』離婚を切り出しているわけです。

でも、本当に突然、夫から離婚を切り出されてしまうケースもあります。

たとえば、不倫の証拠を見つけて夫を問い正したとたん、『そんなに俺を疑うのか?もうオマエとはやっていけない!』と逆ギレされ、一方的に離婚宣言されてしまうケースです。

中には、『好きな人ができたんだ。だから僕と離婚してくれ』と何を勘違いしているのか、当然の権利のように離婚を求めてくる夫もいます。

言うまでもなく、離婚は夫婦の同意が大前提なので、夫が妻の意思を無視して離婚を強行することはできませんし、そもそも有責配偶者(不貞行為をした配偶者)からの離婚要求は無効であると、民法にも定められています。

それにもかかわず、有責配偶者である夫が離婚訴訟した場合、下記のいずれかに該当すれば、棄却される可能性が高いです。

有責配偶者からの離婚要求が棄却される可能性が高いもの

① 夫婦が同居している状態(関係が破綻してたら同居はできないと見なされるから)

② 別居しているとしても、5年に満たない場合(年数は確定的ではなく4~6年のこともある)

③ 別居していても、夫が時々家に戻ってくる場合(家に戻った時点で、別居している日数がリセットされるため)

④ 子供が独立していなくて、親の保護下にある場合(少なくても18歳まで)

⑤ 子供が親の離婚に反対している場合(子どもために家庭環境を保存させる)

⑥別居中の婚姻費用分担義務が果たされてない場合

⑦ 財産分与が正当に支払われる見込みのない場合

⑧ 夫婦関係の破綻が一方的に夫にある場合。

⑥については、別居中であっても、夫は妻の生活費を負担する義務がありますので、それを払っていない場合は、婚姻費用分担義務違反になります。つまり、自分の義務を果たしていない夫からの離婚請求は認めるべきでないという考え方があるためです。

なお、婚姻費用分担義務のよる負担は、生活費の全額というわけではありません。妻にも自分で生計を立てる努力は求められてしまいます。

それから、⑦の財産分与についてですが、離婚する際には、夫婦になってから得られた財産を分け合うのは当然のことです。

ところが「これはオレの車だからオマエには渡さない」とあくまでも分与を拒否したり、分与するのがイヤだからとパチンコや自分の趣味に浪費して、分与不能にしてから離婚を切り出す夫もいます。

たとえ夫名義の車であろうと、夫名義の貯金であろうと、夫婦になってから得られたものなら、あなたにも対等の権利があります。

ましてや、共有財産を一方的に浪費して使ってしまったあげく、『お前とは離婚だ』が通用しないことは、当然の話ですね。

こうしたことを、夫自身がきちんと認識できておらず、自分の気持ちと勢いだけで離婚を口にしているケースがとても多いです。

でも、浮気をしている時点で、離婚は彼の意思ではできません。

あなたは、いくら離婚を切り出されたとしても、「あら、有責配偶者のあなたにはその権利はないのよ」と切り返せばよいのです。

もしも「これはオレの家だ。離婚がしないならここから出て行け!」といわれても、「この家は夫婦の共有財産だし、私を追い出せば、 あなたは私の生活費を負担する義務があるのよ」と言ってあげてください。

夫から『離婚したい』という言葉が出ることは、とてもショックなことだと思います。でも、彼が有責である限り、離婚するか否かを決めるのは、彼ではありません。

逆に言えば、あなたが離婚したいと思えば、ご主人がいくらそれを拒んでも、問答無用で離婚できます。

そのうえで、妻として、彼の言葉にどう対峙するかが大切になってくると思います。

 

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