あるご夫婦に、夫婦コンサルティングをさせていだたいたときの話です。
ご主人が主導でお話を聞かせてくださったのですが、それは次のようなものでした。
「私の不倫が発覚して、女性とも関係を断ち、やりなおそうとしている最中です。でも、喧嘩や衝突が毎日のように起こってしまい、疲弊しきっています。
私は、再出発するといったのだから、もう責めないでほしい。過去のことよりこれからのことを考えようと言っているのですが、そう言うと、余計に妻は激高してしまいます」
それを聞いて、奥さまは私にこうおっしゃいました。
「夫は終わったことにように言いますが、私は今も苦しみ続けています。私が少しでもこのことに触れると「またその話か」とうんざりした様子だし、こんな状態で再出発なんてできるわけないです。自分がどれほどのことをしたのか、この人はわかっているのでしょうか?」
お二人の口か出た「再出発」という言葉。
夫婦の関係修復の際にはよく聞かれる言葉ですが、そもそもこの「再出発」に対する受け止め方が、ご夫婦の間でズレがあって、そこから不満や衝突が始まることもよくあります。
不倫した夫にとって、妻との再出発とは、いままでの過ちを謝罪したうえで、あらたな夫婦関係を再構築することだったりします。
つまり、「もうしないから許してください。そして、今までどおりにやっていきましょう」ってこと。
でも、妻にとっての再出発とは、あくまでも修復を試す期間です。
いくら不倫が終わっているとしても、夫と元通りにやっていけるかどうかはわからない。
決して許せたわけではないし、信じれたわけでもない。
心は壊れたままだし、不安が消えたわけじゃないけど、「夫婦」という形をあきらめたくない、できるなら回復していきたいという思いから、再出発という「試しの時期」を迎えていくわけです。
ご夫婦でのご相談をうかがっていると、そこの認識がお二人の間でまったく違っていることがよくあります。
そのために、お二人の心に溝が生まれ、批判や疑念、不満や対立が生じしまうことがあるのです。
言い換えると、再出発とは、この「二人の心の溝を埋めていく作業」そのものだといえます。