大人の発達障害、という言葉があります。
「大人の発達障害って、子どもと違うんですか?」といわれたら、発達障害は先天的なものですから、大人も子どもも変わりはありません。
というか、発達障害の症状は子どものときから発現するので、大人になってから発達障害になるということはないのです。
ではなぜ、大人の発達障害という言葉がでてきたのか?
発達障害の傾向として、協調性を保てなかったり、相手の気持ちを理解したり、他人とコミュニケーションを図ることが苦手です。
子どものうちは、「変わった子ね」とか「子どもなんだから」と大目に見てもらえたりしますが、社会人となれば、仕事においても人間関係においても、背負うべき責任の大きさや複雑さが増し、それ相応の反応や振る舞いを求められます。
周りの目が厳しくなるぶん、子どものときとは比較にならないくらい色々な問題が表面化してきます。
おそらく、そうした背景があって、「おとなの」と言う言葉がつくようになったのではないかと思います。
よくあるご相談で、アスペルガー症候群の夫が、妻に対してとても一方的で、夫のルールのなかでしか話しあいができない、というお悩みを伺うことがあります。
「もっと頑張れ、努力しろ、どうしてこんなことができないのか?」と、できない妻が悪いという前提を据えられてしまうということがありますが、これも、決して妻を見下しているとか、冷酷な性格だからということではなく、妻の気持ちが「わからない」というところから来ている部分が大きいです。
そういえば、E子さんという女性からのご相談で、こんなお話を伺いました。
「夫はアスペルガー症候群で、自分でもそれを認めています。
職場では信頼も厚く、仕事もできて、役職にもついています。収入も高いほうだと思います。
まわりの人からは、「とてもやさしくて素敵なご主人ですね」とうらやましがられます。
でも、家での夫は、優しさもなく、傲慢で、些細なことで罵倒されるここともあります。
「どうしてこれくらいのことができないの?」と真顔で言ってきます。
少しでも反論すれば、とたんに不機嫌になり、私に暴言を吐くこともあります。
でも、夫は外では優しく振舞えるんです。これって、私に愛情がないからでしょうか?」
この方のご主人に限らず、アスペルガー症候群の方でも、職場や友人との関係においては、表面上とても穏やかで、他人とうまく関係を保っている姿があったりします。
でも、それはあくまで仕事や必要な人間関係を維持するために、必要上やむを得ずやっている姿です。
その反面、家に帰ると妻に対しては遠慮がなくなりますし、求める内容も自分本位になりがちです。
E子さんのご主人のように、「妻はこうあるべき」とか「これが普通だろ」と自分のルールをあてがってくることもあり、それが時としてモラハラ的な発言につながってしまうこともあるのです。