モラハラに見られる2つのタイプ

モラハラとはモラル(倫理)のハラスメント(嫌がらせ)という意味で、その呼び名のとおり、倫理的な嫌がらせによって、精神的に相手を追い詰めていく行為です。

精神的DVともいわれ、物理的な暴力は振るわないものの、暴言や相手を否定する陰湿な言動、無視するとか理不尽に責めたてるなどの行為によって、相手の心に深刻な傷を与えます。

2020年に行われたある調査によると、離婚した夫婦の離婚理由において、DV・モラハラは第3位にランクインしているそうで、離婚まで至らずとも、特に夫のモラハラで悩んでいる方は相当な数に上ると思われます。

そういえば、以前にモラハラに対してある精神科医の先生にお話を伺ったことがあります。

その先生は、『モラハラはDVと同様に人格障害によるものなので、治ることはありません。また明確な治療法というのも存在しません』という見解でした。

ただ、私がこれまでご相談をいただいてきた中で、モラハラには大きくわけて二つのタイプがあると感じています。

ひとつは、本当にガッチガチのモラハラ気質で、人からモラハラの指摘を受けても、改めるつもりもなければ問題にすら思っていない、確信犯的にTHE・モラハラを地でいくタイプ。

もうひとつは、自分がモラハラをしていることに自覚がなく、意識が低いうえに言葉に対して思慮がないため、妻や職場の部下などにモラハラ発言をしていても、それがモラハラだと認識できていないか、日常会話の許容範囲内のことで、大したことはないと思い込んでいる「無自覚症状」タイプです。

このタイプの場合は、自分のモラハラに対してしっかり問題意識を持つことができれば、かなりの部分で改善できる余地があります。

なお、モラハラはよく、アスペルガー症候群やADHDなどの発達障害に起因するといわれることがありますが、これらは『人格障害』とは別のものですし、一概に論じることは、あらたな差別的見解になりかねず、個人的にはこの風潮にはたいへん懸念を感じています。

ざっくりと触れておきますと、アスペルガーやADHDはその特性から、相手を思いやったり、共感することがたいへん難しく、相手を困らせてしまう言動が見られがちです。しかしそれは故意ではなく、誰に対しても同様な言動に及んでしまうものです。

しかし、モラハラ行為というのは、相手を選んで意図的に行っているものであり、発達障害の特性とは明確に区別する必要があります。

そのうえで、モラハラをしてしまう人の背景には、たとえば親からの影響があったり、その人自身の考え方やもともとの性格などがあり、『人としての在り方』の一端が、モラハラという形で出てしまっていることも無視できない事実です。

モラハラを行う人自身の心の中に、他者から不当に攻撃や批判を受けた傷が潜んでいたり、自身がモラハラをされてきた過去があったという事例も実際にあります。