ご相談者のM子さん。結婚して18年。
結婚当初からご主人のモラハラに悩んでいて、それでも子どものためにと耐えてこられました。
しかし、お子さんが高校に進学されたのを機に、このままご主人の言動が変わらないようなら、離婚も真剣に考えているということでした。
夫婦間でも、これまでに何度か話しあいを試みたものの、いくらM子さんが気持ちを伝えても、ご主人は「自分の何が悪いのかわからない」とか「これくらいで離婚をいうほうがおかしい」といった主張をするばかりで、話しあいは一向に進まなかったそうです。
そこでM子さんは、なんとか夫婦での話し合いを進めるために、夫婦コンサルを利用したい、ということでご依頼をくださいました。
ご主人のほうも、とにかく離婚は回避したい意向があり、渋々ながらも私を交えた話し合いに応じてくれました。
コンサルティングは、まずはM子さんとご主人の双方からお話をお伺いし、それぞれの主張のどこに問題点や食い違いがあるかを探すところから始まりました。
M子さんは、ご主人の言葉に冷たさや威圧感、上から目線の言い方にずっと傷ついていて、それが続くなら夫婦として限界を感じていること。
ご主人は、それはあくまでも夫婦の日常的な会話の範疇であり、それを理由に離婚になるなど考えられない、逆に妻の主張こそ一方的ではないか、と反論されました。
私は、ご夫婦の関係改善には、やはりご主人に意識を変えていただく必要があると感じました。
そのためにはM子さんよりも、むしろご主人からより多くのお話を伺い、時間をかけていくことが重要と考え、およそ3か月間、7回ほどのコンサルティングを実施させていただきました。
ご主人のお話を伺っていて感じたのは、ガチガチのモラハラ気質というよりも、言葉に遠慮がないモラハラ的なタイプという印象でした。
このような男性は、モラハラの自覚はないけど、そうした発言を日常的にしていて、しかも本人は日常会話のつもりですから、相手の心を傷つけていることにまるで気づいていません。
逆にいえば、そこに気づいて理解が及べば、かなり改善できる可能性があります。
そこで私は、M子さんがご主人の言葉のどの部分をモラハラと感じ、なぜ傷ついているのか、それをこれまでどんな気持ちで受け止めてきたのか、そしてそれはモラハラとして決して軽くないレベルであることをお伝えしました。
さらに、このままでは夫婦関係の継続はますます難しくなってしまうこと。
離婚を回避するためには、ご主人の言葉への意識を大きく変える必要があることもお話させていただきました。
意外だったのは、ご主人が私の話に対して、非常に率直な反応を示されたことです。
もちろん反論もありました。また、具体的にどうすればいいのか、議論を交わしたことも多くありました。
ただ、4回目のコンサルティングが終わったころから、ご主人の態度も少しずつ変わってきました。
そして、7回目の時には、次のような言葉をいただきました。
「正直、牧口さんから私がモラハラだといわれたときは、認めることができず、赤の他人に何がわかるんだと、けっこう腹が立ちました。でも、牧口さんに言われたことを実践したり、妻に感じたことを話していると、二人の間に流れる空気が不思議と穏やかだったり、妻の表情が前より明るくなってきたことに気づきました。それは疑いようのない結果でした。そして何より私自身、言葉の使い方がすごく変わってきています。最近は職場でも部下が見せる反応や表情が変わってきていて、これにはとても驚いています」
そしてM子さんも、離婚についてはもう一度考え直そうと思っておられます。
『私も今さら、本当は離婚なんてしたくありませんから』と前向きな言葉もいただきました。
モラハラをしていること自体にまったく気づいていない人は、結構いるものです。