自己否定の言葉を『否定』せよ

ご相談の中で、自分を否定する言葉ばかりを口にされる方がいます。

自分はダメだとか、自分がしっかりしていないからとか、私は役立たずだから、とか。

『なんでこんなに自分を否定されるのだろう?』と思ってさらにお話を伺っていくと、夫(恋人の場合もある)がモラハラだったり、態度が威圧的だったりして、日常生活で否定ばかりされている姿が見えてくることがあります。

どんなに明るくて前向きな人でも、毎日のように否定の言葉を浴び続けていると、まるで暗示というか、洗脳されるように、本当にそういう人になってしまいます。

これはとにかく、環境を変えることが必要です。

具体的には、『自分を認めてくれる人との時間を持つ』こと。

たとえば、専業主婦でずっと家にいるという方は、思い切ってパートで働いてみる。

働くことで、あらたな人間関係ができて、そこで自分の役割を与えられ、頑張ることで自分が正当に評価される環境に身を置くことができます。
すると、家で夫にどんなに否定されても、次第にその言葉に縛られないようになっていきます。

また、働くのが難しいという方は、結婚前からの友人、知人と会う、というのも有効な方法です。

たとえば、学生時代から親しくしている友人とか、昔お世話になった先輩とか、当時の学校の先生など、以前のあなたを知る人と会ってみる。もちろん肉親とか身内の人でも構いません。

これは、当時の自分を知る人と話をすることで、『忘れていた本当の自分』を思い出して、今の否定的な考えに対抗する意識を持つチャンスとなるからです。

夫のモラハラに悩んでいたW子さんは、この方法を利用されたひとりです。

W子さんは、数年ぶりに学生時代に仲の良かった友人と会い、次のように言われたそうです。

『あなた、どうしたの?印象がずいぶん変わったね。以前はもっと元気で活発で、明るく笑う子だったのに。なんだか、人の顔色を見て笑っているみたいよ』

その言葉に、W子さんは我に返った思いがしたそうです。

『本当に久しぶりに、私を思ってくれる、心の通った言葉を聞いた気がしました。言われてみればこの数年間、心から笑ったことがなかったし、人の顔色ばかり気にしていた気がします』

このことをきっかけにして、W子さんはいかに自分が夫の言葉に支配されていたかに気づき、『本来の自分』を取り戻すことができました。

とはいえ、日常生活における夫のモラハラがなくなったわけではありません。

ただ、その受け止め方、対応の仕方が変わったのです。

私からのアドバイスとしては、次のようにお伝えました。

『ご主人の言葉にいちいち対抗する必要はありません。対抗したところで、倍返しで否定や攻撃の言葉が返ってくるだけです。なので、表面上は今まで通りに合わせておけばいいです。

ただ、内面のご自分は決してその言葉に支配されることなく、『私をわかってくれる人はたくさんいるのだから、この夫の言うことのほうがおかしいのだ』と客観的に見るようにしてください。

ご自分を否定する言葉を『否定』するのです。そうすることで、少なくても今までのようにメンタルが壊れ続けていくことは阻止できます。

もちろん、夫婦関係においてそれでより良い関係と言えるかと言えば、決してそうではないのですが、こうした『自分のメンタルを保つ』ための考え方を持つことも、実はとても大切なことと言えます』