離婚の準備:養育費の基礎知識

養育費は、離婚の財産分与や離婚の慰謝料とは、性質が異なります。

当然ですが、離婚したからといって、あるいは親権を得られなかったからといって、親子の関係がなくなるわけではないですから、子供への扶養義務はなくなりません。

子どもへの扶養義務には生活保持義務と生活扶助義務の二種類があり、

①生活保持義務=自己と同等の生活レベルを被扶養者にも保持させなければならない義務。養育費はこの生活保持義務に該当します。

②生活扶助義務=自分の生活の余裕のある範囲内で被扶養者の最低限の生活扶助を行う義務に分類されます。

養育費の主な内訳としては、毎月の「衣食住」「教育」「医療費」「適度の娯楽費」などがあげられ、通常は、子供と別れた父親が、子供が満20才になる迄の毎月の養育費(生活費・教育費等)を扶養義務として、扶養能力に応じて分担して負担、母親に送金します。

なお、養育費は、夫婦で負担しあうものなので、もしも父親がこどもを養育している場合は、同様に、母親にも父親に養育費を送金する義務があります。

但し夫婦間で各子供の養育費の支払終期を、「高校卒業まで」とか「大学卒業時まで」、「大学院卒業時まで」等と取り決めて実行するのは自由です。

今日では高等教育(大学・短大・専修学校等)も一般化しており、大学卒業までの生活費を親が面倒見ているのも一般的ですから、こういう高等教育の費用も養育費に含めうるとされています。

また、親の扶養を受けることができる子を未成年に限定することなく、未成熟子という概念で捉えると、子供が成年に達していても大学在学中である場合や子供が大学進学を強く希望している場合であって、親の資力、学歴、社会的地位等から通常高校卒業以上の高等教育を受ける家庭環境であると判断される場合には、子どもは親に具体的な扶養義務(教育費等の負担)を負担させることもできると考えられます。

判例でも、父親が医師である場合や、父が小学校教員である場合等でいずれも大学卒業時までの扶養料の支払い義務を認めています。

これらの判例は、未成熟子の扶養の本質をいわゆる「生活保持義務」として、扶養義務である親が扶養権利者である子について自己のそれと同一の生活を保持すべき義務を負うという考えに基づくものです。(ここでいう未成熟子とは、一般に、「身体的、精神的、経済的に成熟化の過程にあるため就労が期待できず、第三者による扶養を受ける必要がある子」とされており、行為能力の有無を基準とする「未成年者」という概念とは異なります。)

ただし、毎月の支払額については、一概にいえるものではなく、父母の資産・収入の違いや、離婚時点で子供が2~3才なのか、私立小中学校に通っているかなどの状況や、父親の子に対する愛情の程度・支払いに対する姿勢等で変動幅があります。

また、たとえば夫が子どもを引き取ることを主張して、妻のところにいる子の養育費の支払を拒むということもよくあります。

その場合、配偶者に対する強い敵意や不信感から拒否していることもありますが、養育費を払える方が子どもを引き取る権利があるという意識も根強くあるようです。

しかし、どちらが子どもを引き取るかは、お金の有無ではなく、むしろ、養育者としてどちらが適任であるかどうかで決めるものですし、養育費は実際に育てているかどうかにかかわらず、父又は母という同じ立場から負担能力に応じて決められるものなのです。

いずれにしても、養育費は、子供の権利として子供が受けるべきものであり、受取人は母親であっても、養育費自体は子供のものなのです。つまり、養育費は必ずしも経済的にゆとりのある夫側が支払うものとは限らず、夫が子供を養育している場合には、経済的に苦しい妻が夫側に対して養育費を支払わなければならないケースもあります。