不倫の相談:浮気の罠に落ちるとき④

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仕方なく、とうとう、Aさんは切り出しました。

「社長様、申し訳ありませんが、わたくし、そろそろ……」

「お、おおっ、すまんすまん。つい、話が長引いてしまった」

すまなそうに謝りながら、社長さん、解放してくれたそうです。

さて、問題はこれからでした。

ようやく仕事が終わって、帰り道の途中。

不意にAさんの携帯がメールの着信を告げました。

見ると、C社の事務員、E子さんからでした。

そこには、こう書かれていました。

「今日で、仕事をやめることにしました。Aさんのこと、どうしても好きになってしまったんです。昼間、うちの社長とお話されている様子を見て、Aさんがどれほど奥さんとお子さんを大切におもっていらっしゃるか、痛いほど感じました。そんなあなたを好きになること自体、いけないことなのはわかっています。ごめんなさい。連絡は二度としません……お元気で」

いかにも芝居がかっていますが、Aさんはすっかりこの「罠」にはまってしまったのです。

AさんはあわててE子さんに電話をかけ、とにかく落ち着いて一度会おう、という話を取り付けてしまいました。

翌日、AさんはE子さんと会うことになり、その日から、Aさんの浮気が始まったのです。

なぜ、そうなってしまったのか。

この場合は、E子さんは、あきらかな心理的陽動作戦を実行しています。

仮にE子さん自身にその気がないとしても、です。

どういうことかといいますと、基本的に男性の多くは、自分のことに好意をもってくれている女性が、それを告白して一方的に去ろうとすると、引きとめようとする傾向が非常に強いのです。

たとえ、ふだん妻や子供、家庭のことを自分の身体以上に大切に思っている男性であっても、思いがけず「あなたのことが好きです。でも迷惑はかけたくないんです。さようなら」と切り込まれれば、離れようとするその相手の腕をつかもうとしてしまうのです。

まぁ、はなからまったく無関心な相手なら、この限りではないですけれども。

さらに、E子さんは会社の用件を口実に携帯番号とメールアドレスを聞き出していますが、これもなかなかうまい手です。

一緒にお茶でも、という理由ならともかく、仕事上での連絡を理由にされたら、まず断る男性はいません。

また、社長との話を介して、必要な情報を収集しています。

直接本人から聞きにくい話でも、第三者を挟んで、その会話の中で適当に話題を振ることで、カンタンに情報を得ることができるというわけです。

この方法なら、自分の住んでいるところや環境、家族のことなど、つい話してしまいますね。

さらに、決め手はこの「別れのメール」です。

そもそも、なぜ、A子さんは、わざわざメールでお別れを言ってきたか。

本当に好きなら……まぁ、たぶん好きなんでしょうけれども、本当に二度と連絡しないつもりなら、最後に声を聞くために電話をしてくるのが普通だと思いませんか。

なのに、なぜ、メールか。 (続きはこちら)