不倫の手記:浮気の罠に落ちるとき③

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ただ、その翌日は、結局社長さんずっと会社にいらっしゃって、彼女からの連絡はなかったんですけどね。

Aさんは社長さんに頭をさげて、「先日はどうも申し訳ありませんでした。

うちの製品が原因で御社の業務に支障をきたしてしまって……」

そんな感じで恐縮しまくって頭をさげる。

ただ、このC社の社長さん。もともと気のいい人だから、あまりカリカリは怒らない。

逆に、律儀に謝りに来たAさんをたいそう気にいって、それならパソコンも入れ替えようかなんて話になってきた。

これはもう、Aさん営業マンとしての腕の見せ所ですよね。

うまくいけば、近々パソコンまで買ってもらえるかもしれない。

余談ですが、こういうときはすぐにセールスの話に入っちゃいけないそうです。

いきなりセールスの話をすると、せっかく買おうという気になっている相手も、たちまち買う気が失せる。

だから、とにかく、相手に話させる。雑談でも世間話でもいいから、相手に話をさせて、自分は聞き役に徹する。

聞き上手になることが、とっても大切だそうです。

ところがこの社長さん、とにかく話好き。

ひとしきり話相手をさせられるハメになった。

正直、忙しいAさんにとってはツライ。

でも、お得意さんだし、新しい契約もしてもらえそうだからムゲにはできない。

実はけっこう、中小企業の社長さんって、こういう話好きの人、多いらしいです。

「Aさんは、営業マンとしての経験は長いんでしょうな」

「いえ、それほどでもないですが、今年で7年になります」

「確か、営業部の主任さんでしたな。若いのにたいしたもんだ」

なんて話が延々と続きます。

そのうちお茶を替えに来たE子さんが、Aさんの左手の結婚指輪に目をとめ、「あらっ、Aさんって、ご結婚なさってるんですか」と話を振りました。

するとそれをきっかけにして、社長の話題は、Aさんの結婚や子供のことに話が移っていきます。

「Aさんはもうご結婚何年目ですかな」

「あ、はい。結婚して2年になります」

「あんたの奥さんなら、きっとべっぴんさんだろうなぁ。お子さんは?」

「息子が1人おります。1歳になります」

「さぞやかわいいでしょうな」

「はい。妻と息子を幸せにすることが、私の夢ですから。念願の家も買いましたし、がんばらないと」

「ほぉぅ。若いのにたいしたもんですな。家はどちらに……」

な~んて話が1時間以上続いたそうです。

(さて、さすがにそろそろ……)

Aさんもあせってきました。

次の訪問の予定もつまってますし、いつまでも社長の機嫌とってるわけにもいきません。

でも社長さんはこの日は相当に暇らしく、なかなか彼を解放してくれそうにもあまりせんでした。

(まいったな。)

内心、困り果てながら、事務机で記帳をしているE子さんに目を向けました。

ところが、今日に限ってE子さんはまるでAさんと目を合わせようとはしません。

それどころか、ずっとうつむいたままです。

仕方なく、とうとう、Aさんは・・・・・・

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