フラッシュバックに苦しむ妻と夫からのSOS 

A子さん(主婦・36歳)のケース

最初はA子さんからのご相談で、ご主人の浮気はもう終わっているということでした。

悩んでおられる点としては、A子さんはご主人との関係を修復したいし、ご主人も同じ思いで頑張ってくれていると思うけれど、A子さんのフラッシュバックが激しく、感情が爆発してしまったときには、ご主人が「またか」という感じで外に出ていってしまうそうです。

初めは辛抱強く受け止めてくれていた夫の様子が、なんだか冷たく感じられて、自分だけが置き去りになったような気持ちで、いつまでこんな状態が続くのだろうと不安を感じて、電話相談をご利用くださいました。

A子さんからお話を伺っているなかで、ご主人も精神的にかなり疲弊している様子を感じました。

このままではご夫婦がともにストレスにつぶれてしまう恐れがあると感じ、可能であればご主人ともお話をさせていただきたくご提案したところ、ご主人とも電話でお話をさせていただくことができました。

以下はそのときの内容(一部)です。

牧口 「奥様からはひととおりのお話を伺っておりますが、ご主人からみて、奥様はどのようなご様子ですか?」

ご主人 「妻はふだんは普通にしています。ただ、ときおり深夜に、いきなり大声で叫び出したり、泣きだしたり、怒りをぶつけるような感じです。子どもも小さいし、夜中で近所迷惑にもなるので、必死になだめていますが、私も少し、精神的に参ってきています」

牧口 「奥様のフラッシュバックは、心の傷の深さを物語っています。そうとうお辛い思いをされたのだと思います」

ご主人 「浮気をしたことは、妻に申し訳ない気持ちです。正直いって、初めは軽く考えていたのですが、夜中に妻が豹変するのを見るにつれ、浮気でこれほどまでに妻が壊れてしまうのかと、今更ながら自分のしたことを深く後悔しています……」

牧口 「奥様はご主人のことを信じたいと仰っていました。でも、まだ不安があって、100%とはいかないみたいです」

ご主人 「……妻は私のことが許せないのでしょうね。たぶん、裏切った私を憎くてしかたがないのでしょう」

牧口 「そう思いたいお気持ちはわかります。でも、奥様はご主人を責めたいわけではなくて、過去を思い出して不安とストレスが限界に達して、爆発している状態です。こうした感情の爆発は、奥様のストレスを外に出すためには、実は必要な部分もありますので、あまり否定的に捉えないようになさってください」

(中略)

ご主人 「ただ、今はもう本当に相手の女性とは会ってもいないし、子どものことなども含めて家庭を滅茶苦茶にしたことを反省していて、妻に対しても、子どもに対しても、一生懸命、できることはしているつもりですが……」

牧口 「そうですね。奥様はご主人の今の姿に不満があるわけではないんです。むしろ、過去のご主人の姿を見て苦しんでいるのです。奥様はなんどもご主人を信じようとして、なんども裏切られ、失望と裏切られた思いを味わってこられたのでしょう。そのときの苦しみから、まだ抜け出せていないだけです。それはご理解いだたけますか?」

ご主人 「はい。確かになんども嘘をついて、妻を苦しめてしまいました。今も、妻から事あるごとにその話をぶり返されて、時にはすごい剣幕で罵られます。そして、まだ自分のことは何も信じてもらえてないのか、「またその話か」という思いになってしまいます」

牧口 「ご主人も相当しんどいと思います。ただ、奥様とご主人とでは、時間の流れるスピードが大きく違います。相手女性と別れて2ケ月ということですが、ご主人も毎日すごく頑張っておられるのでしょうが、奥様にしてみたら2か月なんて昨日、おとといのことと変わりません。多くの方は、半年から1年以上、こうした時期を経て、夫婦関係の修復をしていかれます」

1年以上の時間がかかるかもしれない、ということは、ご主人にとっては思ってもいないことだったようです。

牧口 「奥様は、ご主人が自分に対して気を使ったり、優しくしたりしてくれていることを、本当はわかっていらっしゃいます。そして奥様も、ご主人とやり直していきたい、浮気が始まる前の夫婦に戻りたいと強く思っていらっしゃいます。

ご主人のことが、やっぱり大好きだからです。

でも、思いだしたくなくても、時々、ご主人の浮気をしていたときのことで頭がいっぱいなり、感情が爆発してしまい、自分でも責めたくないのに責めてしまう。自分の感情をコントロールできない苦しさに震えていらっしゃいます」

電話口で、ご主人は泣いているようでした。

牧口 「今、ご主人にできることは、ただひたすらに、少しでも奥様の不安が和らぐように、心に寄り添って同じ時間の速さで隣にいてあげることだと思います。

そして、少しでも、奥様の気持ちを理解して、受け止めてあげてください。

それでなくても、夫婦であっても、男性は女性の思っていることの3割程度しかわかっていません。だから、言葉や態度で示さないとわからないものです。

喧嘩になっても、次の日でもいいから、誤解があったら丁寧に説明して、自分の思いをわかってもらうように説明していきましょう。

ご主人が自ら進んで解決していきたい姿勢を示してあげてください。それを受けとめることができるのはご主人だけです。

奥様は責めたいわけではないのです。許せないわけではないのです。ただ、不安でしかたがなくて、その不安を打ち消すために、確かめたくて何度も「あの時」の話を繰り返してしまうんです。

フラッシュバックは不安が少しずつ治まっていけば、頻度も減っていきますし、落ち着いて過ごせる日々も増えています。

奥様は心のリハビリの最中ですから、ご主人に対して荒れてしまう日があっても、責められているとか、「俺を許せないんだろ」という風に考えず、辛抱強く寄り添ってあげてくださいね」

ご主人「よくわかりました。正直、私もしんどいですが、妻はもっと苦しい思いをしているんですね。フラッシュバックのときも、なるべく逃げないように努力します。また時々、電話させてください」

その後、数か月ほどのちに、ご夫婦で旅行に行かれた際のものと思われる、お二人で仲良く写った写真とメールをいただきました。

幸せそうに笑っているA子さんと優しそうなご主人の様子を拝見して、私も本当にうれしく思いました。