浮気事例・『籍を抜きたいんだけど』と切り出した夫③

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セックスレスであることと、妻の態度が悪い、というのがその理由でした。

性生活がない、ということについては、ご主人の不満が募っていたことが理解できないわけではないですが、尾崎さんの当時の状況を考えてみますと、家事と育児にクタクタでそれどころではない、というご心情だったことも、無理のないことだったと思います。

そして、その大変な状況を見てもなお、優しい言葉をかけるとか、労をねぎらうといったことが一切なく、飲み会や自分の趣味ばかりに興じていたご主人・・・・・。

そのうえ、セックスに応じられない尾崎さんに対して冷たい言葉を投げつけたことは、尾崎さんの心にどれだけ深い傷をつけてしまったことでしょう・・・・。

そもそもセックスというのは、愛情を証する究極のスキンシップですから、させるとか、させないとか、させないから怒るとか、したくないなんて異常だとか、そういう性的欲求のはけ口としてしか考えてないご主人の言動にもかなり問題があります。

また、ご主人は、尾崎さんが子育てや家事を懸命に頑張って、家庭を支えてこられたことについては、まったく理解や感謝がないご様子ですが、家事だって立派な仕事です。

専業主婦であっても、夫婦の共有財産に対する財産分与の権利は当然ありますし、のちに明らかになりましたが、ご主人は浮気についても認めていて、性的関係があると推察できる内容の会話もされていますので、不貞の事実に対する慰謝料の請求も当然できます。

もしも、尾崎さんが離婚を考えているが、この条件では納得できないと思われた場合には、妻として正当な権利を主張したうえで、ご主人に責任を求めることも考えてよい状況と思います。

そもそもご主人は、浮気の有責者ですので、自分から離婚請求をだすことができませんので、離婚に関する主導権は、尾崎さんが握ることになります。

さらに、ご主人が離婚理由としてあげているものに、『夫に対する妻の態度が悪い』というのがありますが、家庭をかえり見ない夫に対して妻として苦言を言うことがあっても、それはむしろ当然のことですし、尾崎さんがそのことでご自分を責めたり、『私がもっと我慢すれば・・・』と後悔しなければならないようなものではないと思います。

ただ男性は、女性の出産後の心情や身体の変化に対してわからないことが多く、夫婦のすれ違いが深まってしまう原因になりやすいので、そうした理解しあうための会話も大切なことといえます。

ここから再び、尾崎さんのご相談に戻ります。ここからは、ご主人との話し合いの場面になります。

 

私が息子たちと話し合った数日後、主人は息子たちに話をしました。

私は隣の部屋にいて、その場にはいませんでしたが、主人の声は今も耳に残っています。

主人 『お前たち、母さんから聞いたかもしれないが、父さんは、母さんと別れようと思う』

息子たちの声はありませんでした。きっと、息をのんだように黙ったのでしょう。

そして、主人は三男であるYに対してこう言いました。

主人 『離婚したら、母さんは出て行くつもりみたいだが、Yは高校卒業するまでここにいてもいい』

三男は黙ったままです。

続けて長男の声。

長男 『父さん、好きな人でもできたのか?』

主人 『最近、できたんだ』

長男の問いに誤魔化そうとせず、認める発言をしたことは意外でした。

この告白のあと、主人は私に対して、『息子たちに話をした。お前とは別れて、彼女と一緒になりたい』ということを告げてきました。

 

尾崎さんは、そのご主人のその言葉によって、はじめて現実を受け止めさせられた、とおっしゃっていました。

そして、離婚になってしまうのは仕方がないが、夫の都合で離婚になるのは納得できない。

協議離婚に応じるのではなく、調停離婚によって、しっかりと夫に責任を求めたうえで離婚に応じたい、という方向に、決心が固まってきたご様子でした。

そのときのご相談の様子の一部をつぎにご紹介します。

尾崎さん 『冷静に考えてみると、主人の主張は、本当に自分勝手なものばかりだな、と思います』

牧口 『そうですね。ご主人はそもそも有責配偶者の立場ですから、尾崎さんの合意なくして離婚することはできません。まして、籍を抜くとか離婚するというのは、慰謝料や財産分与、養育費などの問題も解決済みで、なおかつ尾崎さんが納得できる条件が整った上でなければありえませんし、はじめにご主人が一方的に籍を抜く話をしてくるというのは、順番としてもおかしいのです』

尾崎さん 『はい。さいわい、息子たちも離婚について理解してくれました。子供たちの理解と心の支えがあったからこそ、私も気持ちの整理が大分ついてきて、母親として強くなることができました。

離婚することは仕方がないし、そのほうが自分のためと思っているのですが、主人の思い通りに離婚するのは絶対にいやです』

牧口 『おっしゃる通りです。ではご主人には、「協議離婚では私の権利が守られないから、家庭裁判所に調停離婚を申し立てます」と毅然と尾崎さんの意思を伝えましょう』

私が上記のようにお伝えしたのは、男性と話し合いをするときは、感情的にならず、淡々と理詰めで話を積み上げていくほうが、逆ギレされにくい状況になり、話の流れをリードできるためです。

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