ほんの数秒だったと思いますが、沈黙が流れました。
わたしには、とてつもなく苦しく、重く、長い時間に感じました。
そして、一言だけ、夫はいいました。
「知らないよ、こんな人」
ほうっ、と息がでました。
わたしの待っていた返事が、夫の口から返ってきたのです。
身体の硬直が解けていくのを感じていました。
でも、それなら背中のホクロはどうして知っているのでしょう。
わたしがそのことを聞くと、夫は、前に一緒にサウナに入った同僚は、そのことを知っているから、多分そいつがどこかで誰かに言ったのではないか、といいました。
どうせ悪い冗談だろうから、同僚を問いただして誰に言ったのかつきとめてやる、と言ってくれました。
身体のなかを、やっと血液がまともにめぐりだしたような感じでした。
やっぱり、これはイタズラだったんだ。
わたしには関係のない話だったんだ。
今までの幸せが、こんなことで壊れてしまうはずがない。
そう思うと、とめどなく涙が流れてきました。
うれしかったのです。
夫の言葉が温かく、優しく、力強く私を守ってくれるもののように感じました。
夫は、わたしのそばにくると、やさしく抱きしめてくれました。
「ばかだな。俺が浮気なんかするわけないだろ」
その言葉をどれだけ待っていたことでしょう。
わたしは夫を少しでも疑ってしまったことを、ほんとうに申し訳なく思いました。
また涙があふれてきました。
自分の不安が消えていくことが幸せで、心も身体も震えました。
私はこの時、まだ・・・・・・(続きはこちら)