夫を浮気相手に奪われた妻の手記④

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ほんの数秒だったと思いますが、沈黙が流れました。

わたしには、とてつもなく苦しく、重く、長い時間に感じました。

そして、一言だけ、夫はいいました。

「知らないよ、こんな人」

ほうっ、と息がでました。

わたしの待っていた返事が、夫の口から返ってきたのです。

身体の硬直が解けていくのを感じていました。

でも、それなら背中のホクロはどうして知っているのでしょう。

わたしがそのことを聞くと、夫は、前に一緒にサウナに入った同僚は、そのことを知っているから、多分そいつがどこかで誰かに言ったのではないか、といいました。

どうせ悪い冗談だろうから、同僚を問いただして誰に言ったのかつきとめてやる、と言ってくれました。

身体のなかを、やっと血液がまともにめぐりだしたような感じでした。

やっぱり、これはイタズラだったんだ。

わたしには関係のない話だったんだ。

今までの幸せが、こんなことで壊れてしまうはずがない。

そう思うと、とめどなく涙が流れてきました。

うれしかったのです。

夫の言葉が温かく、優しく、力強く私を守ってくれるもののように感じました。

夫は、わたしのそばにくると、やさしく抱きしめてくれました。

「ばかだな。俺が浮気なんかするわけないだろ」

その言葉をどれだけ待っていたことでしょう。

わたしは夫を少しでも疑ってしまったことを、ほんとうに申し訳なく思いました。

また涙があふれてきました。

自分の不安が消えていくことが幸せで、心も身体も震えました。

私はこの時、まだ・・・・・・(続きはこちら)