公正証書とは、全国に300箇所ほどある公証役場において、公証人が作成してくれる証書です。
公証人は、30年以上の実務経験をもった法律実務家の中から法務大臣が任命する法律の専門家です。
法律実務家って、難しい言い方ですが、法律にもとづく仕事をする人、つまり、弁護士、検察官、裁判官、司法書士、行政書士、社会保険労務士などいろいろです。
公正証書を作成することで、誓約書や示談書にはない、法的拘束力や強制力を持たせることができます。
たとえば、あなたが不倫相手と『今後、もしも夫と連絡とったら慰謝料300万円を支払う』といった誓約書を交わしたとします。
でも、その誓約書自体には法的拘束力や強制力はありません。
つまり、相手女性があなたとの約束を守らず、さらに慰謝料を払わなかったとしても、『誓約書を交わした』というだけでは強制的に取り立てることはできません。
その場合には、『強制執行の申し立て』を裁判所に起こすことが必要になり、時間もかかりますし、手続きも面倒です。
しかし、公正証書を作成したときに、『甲は、本契約上の金銭債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服することを認めた』といった強制執行許諾の文言を入れておけば、もしも相手からの支払いがない場合に、裁判不要で直ちに強制執行手続きに移ることができます。
公正証書の作成は、公証役場に原文を持参して、まずはその内容を確認してもらいます。
誓約書があるなら、それをそのまま持って行っても構いません。
ただし、その内容を公証人が見て、法的に引っかかるようであれば、部分的に修正や削除を求められることもあります。
たとえば、相手女性に求める慰謝料が『1億円』とか書かれていると、「この金額は不適当なので修正してください」等の指摘をされるといった具合です。
基本的には、公証人はあくまでも中立の立場ですので、どちらかに有利な文書を作るように求めることはできません。
もしも今後において有利な公正証書作成のアドバイスを受けたい場合には、誓約書や示談書を作成する段階から弁護士や行政書士に内容のアドバイスを受けておくことをお薦めします。
法的に問題がなければ、公証人も修正などを求めては来ないはずです。
なお、公証人に原文を見せて、内容をチェックしてもらうときには、あなたひとりで行って構いませんが、実際に公正証書を作成する場合には、当事者双方が公証役場に出向いて署名捺印するか、当事者の一人と代理人が公証役場に出向いて署名捺印する必要があります。
不倫した側とされた側が顔を合わせたくないという心情もあって、不倫の場合は後者になるケースが多いです。
この場合は、どちらか一方が代理人を選任すれば、当事者双方が顔を合わせることなく公正証書が作成できます。
なお、委任状等は必要ですが、公正証書作成代理人に特に資格は必要ないので、親兄弟等を代理人に選任しても構いません。