婚姻費用の支払い義務について

~別居した際に、生活費を夫に請求できますか~

☆問題事例☆

夫は半年前に自分から家を出ていきました。別居後も家のローンは払ってくれていますが、生活費は払ってくれません。私は働いていますが、2人の子供を育てていて生活が苦しいですし、私には離婚する意思はありません。夫に生活費を払ってもらう方法はありますか?

★回答・解説★

夫婦の婚姻期間中は、婚姻家庭がその資産、収入、社会的地位等に応じた通常の社会生活を維持するために必要な費用(これを「婚姻費用」といいます)を夫婦が互いに分担するものとされています(民法760条)。別居していても婚姻関係は継続しているのですから、あなたは夫に婚姻費用の分担を請求することができます。

婚姻費用の額、支払い方法は、まず夫婦の話し合いで決めます。お互いの収入や財産、子供にかかる教育費の額などを考慮して協議決定してください。

婚姻費用の分担について夫と協議できないとき、又は、協議が整わないときは、夫の住所地を管轄する家庭裁判所に婚姻費用分担義務の調停を申し立てることができます。あなたが離婚を望んでいないということですので、円満な夫婦関係の回復を求める夫婦関係調整調停と婚姻費用分担調停を併せて申し立てることもできますし、婚姻費用分担調停だけを申し立てることも可能です。

家庭裁判所の調停においてもそれぞれが負担する婚姻費用の額は双方の合意によって決めるのが原則で、調停で解決できない場合は、さらに審判に移行することになります。

婚姻費用の分担額について双方の主張に隔たりがあり、合意が難しい場合、客観的で合理的な算出方法が必要になります。

家庭裁判所の実務においては、離婚後の子供の養育費を算定する場合の「基礎収入」(養育費の算出方法の項目を参照してください)と同一の概念に基づいて、婚姻費用の分担額を算定しています。すなわち、義務者(「基礎収入」が多く、婚姻費用を支払う義務のある配偶者)と権利者(「基礎収入」が少なく、婚姻費用の支払いを受ける権利のある配偶者)及び子供が同居しているものと仮定して、夫婦双方の基礎収入の合計額を世帯収入とし、その世帯収入を権利者グループの最低生活費と義務者グループの最低生活費で按分し、義務者が権利者に支払う婚姻費用の額を決めます。

しかし、養育費の算定の方法と同様に、婚姻費用分担額の算定においても、従来は「基礎収入」の設定をめぐって審理が複雑化、長期化する傾向がありました。

「養育費の算出方法」の項目でご紹介した東京と大阪の裁判官らで構成する「東京・大阪養育費等研究会」の提案には、婚姻費用についても養育費と同様に簡易迅速な算定が可能になるような新たな算定方式が盛り込まれています。

新たしい算定方式は、「基礎収入」を「税法等で理論的に算出された標準的な割合」と「統計資料に基づいて推計された標準的な割合」により推計することにより、「基礎収入」の認定を簡略化するものです。

あわせて発表された簡易計算方法に基づく算定表は、子供が2人までの場合について、子供の数、年齢構成ごともにまとめられた表を選択して、義務者と権利者の年収(総収入)を当てはめることにより、相当な婚姻費用の分担額が一目でわかるようになっています。

新しい算定方式および算定表は、判例タイムズ1111号(2003年4月1日発行)の巻末綴じ込み小冊子に掲載されています。

同様のものを、こちらからご覧いただけます。(PDFファイルです)

また、婚姻費用について簡易計算できるサイトもあります。

 

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